高齢者のレクリエーション 紙芝居
高齢者のレクリエーションに紙芝居は最適です。
紙芝居が老人ケアに有効な理由は3つあります。
・観て楽しめる
・作って昔を懐かしむことができる
・演じることでわかりあえる
昔の思い出を語り合いながら楽しい時間を過ごす回想法により、互いの親しみが増し、精神的に安定する認知症の方にも有効なレクリエーションなのです。
【紙芝居とは】
紙芝居は物語を厚紙に書き、演じ手が語って進める演技のこと。おもに子供に見せるもの。近年では大人の鑑賞にたえる作品がたくさん生まれています。
もともと紙芝居は街頭紙芝居からはじまっています。昭和5年頃、駄菓子を街頭で売るさい子供を集める手段として広まりました。
自転車の荷台に折りたたみ式の舞台を取り付け、その下の引出しに水飴や駄菓子が入っていました。拍子木を鳴らして子どもを集め、絵は手書き、演技は迫真、色彩も太陽の下で見るために派手でした。内容もいちばん良いところで終わります。「この続きはまた明日!」と紙芝居屋のおじさんは去っていきました。
戦争中は演じ手を兵役にとられて衰退。最終的に1970年、大阪万博のあたりに終わったと考えられています。
また教育の目的でつくられ、学校で使われた教育紙芝居もあります。こちらは印刷で絵の裏に文字が書かれ、先生が朗読。内容もおとなしく、絵柄や色彩もおとなしめです。
【紙芝居と絵本のちがい】
紙芝居も絵本、どちらも優れた児童文化です。紙芝居は日本で生まれ、絵本は19世紀にヨーロッパで出版されました。
絵本の特性は
・ページを自分でめくることで物語が進む
・読者は画面と文章を自分で読み、絵本と向き合う
・一人で読む場合、自分のペースで読める
・個人の感性を育む
・作品の世界を自分のものにする
紙芝居の特性は
・ページを演じ手がぬき、さしこむことで進む
・演じ手が必ず必要である
・次の場面に移るため集中がおきる
・他にも顧客がいるため共感が生まれる
・共感によって感性が育まれる
【レクリエーションの紙芝居には2種類ある】
高齢者のレクリエーションとしての紙芝居には、以下の2種類があります。
・尾崎紅葉の金色夜叉、愛染かつら、安珍清姫物語などのストーリー型
・しりとり、クイズ、歌を皆でうたうなどの参加型
子どもとちがって大人を相手にするため、作品にはお色気シーンや戦争、昔なつかしい衣装や家具も多く登場します。
はじめてみよう老人ケアに紙芝居シリーズには、以下の作品があります。
・金色夜叉
・続 金色夜叉
・かわださん
・待ちぼうけ
・お茶にしましょ
・とばしっこ
・みぃちゃんの春
・みぃちゃんの夏
・みぃちゃんの秋
・みぃちゃんの冬
・みぃちゃんのかぞえうたあそびうた
・みんなでおめでとう
・夏のおもてなし
・しょいくらべ
・どっかーん
・きつねの盆おどり
【老人ケアに紙芝居シリーズのレビュー】
雲母(きらら)書房発行・茂木敏博さん監修の老人ケアに紙芝居シリーズ「お茶にしましょ」「どっかーん」「金色夜叉」をレビューします。
どっかーんのように増刷されず入手困難なものもありますが、近隣の図書館に所蔵されていれば貸出しできる場合があります。
>>お茶にしましょ
和室にて割烹着で座る女性が笑顔で「お茶にしましょ」と誘ってくれます。ちゃぶだい、だいふく、茶柱など、暮らしの中にある道具や食べ物を使ってことば遊びをしましょう。
お茶のちゃ、ちゃぶだいのだい、だいふくもちのもち、といった参加型のしりとり紙芝居です。
(出典 雲母書房 お茶にしましょ 菅野博子、 遠山昭雄)
>>どっかーん
夏の風物詩のひとつ、打ち上げ花火。たまやー、かぎやーと皆で掛け声をかける参加型の紙芝居。
菊の花にはじまって、スイカ、入れ歯、鶴亀とユニークな花火が登場します。花火があがるたびに笑いがおきる楽しい作品です。
暑い暑い、夏の夕暮れ。ケンちゃん、おじいちゃん、おばあちゃん、おとうさん、おかあさん、おにいちゃん、おねえさん、そしてご近所さんも花火を見るために外に集まってきました。
ひゅるるるー。どっかーん。みんな笑顔になりました。
(出典 雲母書房 宮崎二美枝 (著) おかのけいこ (イラスト) 遠山昭雄)
>>金色夜叉
エリート学生の貫一(かんいち)と類まれな美貌の持ち主の婚約者のお宮(みや)は許嫁同士。
上昇志向の強いお宮はカルタ会で出会った富山唯継(ただつぐ)の財力に惹かれます。
お宮の心変わりに気づいた貫一。二人はどうなってしまうのでしょうか。明治一代のロマンスを楽しんでください。
(出典 雲母書房 尾崎紅葉 (著)サワジロウ (絵・脚本)遠山昭雄 )
【関東と関西の紙芝居の演じ方のちがい】
関東と関西で紙芝居の演じ方は大きく異なります。関東は台詞を読んで物語を伝えようとします。関西は観客にじかに語りかけ、観客の声や雰囲気を取り入れて作品を盛り上げます。
関東の演じ方は、舞台の横に立ち観客と向かいあって立ち、裏書を自分自身の声で演じます。作品世界を離れたパフォーマンスをせず、作品の内容を変えて演じてはいけません。芝居をするというより、朗読をするイメージです。
関西の演じ方は、裏書を書かない、読まないのが最大の特徴です。関西では紙芝居も演劇のひとつ。演劇で役者は舞台に台本をもって演じません。つまり関西の紙芝居は、観客も巻き込んだライブそのもの。
これは同じ芝居でも先に入場料を払ってもらう関東と、芸をみせたあとに面白かったらお代をいただく関西の芸に対する本気度の違いからきています。