入浴の介助に必要な道具(入浴補助用具の選び方)
毎日の生活のなかで、お風呂にゆっくりと入る時間を楽しみにしている高齢者は少なくありません。体を清潔にするだけでなく、気分転換にもなる入浴は生きる意欲を高めることにもつながります。
とはいっても、入浴は大きなエネルギーを使います。高齢者である本人の体への影響や介助者の負担も考え、安全で使いやすい浴室環境を整える必要があります。そのために役立つのが入浴補助用具(道具)です。
必要な道具を選ぶための基本は以下の3つ。
・できるだけ自分で入ってもらう
・本人の体の状態にあわせて道具を選ぶ
・今あるお風呂にあわせた道具を使う
【本人の体の状態にあわせて道具を選ぶ】
自分でできることは自分でしてもらいます。つい心配のあまり介助してしまいたくなりますが、リハビリも兼ねているのでなるべく本人に任せます。それを手助けする道具が入浴補助用具です。
背中に手が回らなくてもタオルの両端にループを縫い付けたループ付ロングボディタオルやロングボディブラシを使えば自分で洗えます。
また体の状態は人によって違います。道具もその人の体の状態にあわせて選びましょう。たとえば片マヒがある人が着替えるときに必要なのは、足がきちんと床につき、安定しているイスです。洗い台もマヒのない方に置きます。
【今あるお風呂にあわせた道具を選ぶ】
介助される高齢者に違いがあるように、お風呂もそれぞれ異なります。ご自宅の浴槽にあわせた道具を選びましょう。
脱衣所と浴室の段差を解消するために、浴室用すのこを敷く方法もあります。
浴槽ひとつをとっても「深くて狭い足が向かいの壁につく浴槽(和式)」「背中の壁が傾斜しており足が伸ばせる長い浴槽(洋式)」「洋式より体が起こせて足が向かいの壁につく和洋折衷式」などがあります。
実は広く長い洋式の風呂はお年寄りにとって危険な形です。足が向かいの壁につかないため、立とうと思っても前傾姿勢がとれません。筋力のないお年寄りほど滑って湯の中に落ち溺れやすくなります。浅く長い風呂は体が浮いて落ち着いては入れません。広い浴槽はさらに危険です。
段差が少なくバリアフリー化され、浴槽の高さの低い落とし込み型の浴槽は、お年寄りは大きく前にかがむ必要があります。この動作は転倒につながりやすく、頭から浴槽に落ちる事故につながります。
本当に介護するのに理想的な浴槽は、昔ながらの狭くて深い和式です。浴槽が狭いため膝を曲げても足がしっかり向こう側の壁につくから滑りません。
また浴槽の設置方法も浴室の床と浴槽の高さにあまり差のない「落とし込み型」、浴槽を埋め込み浴室の床から浴槽が40センチほど出る「半埋め込み型」、浴槽の深さと床からの高さが同じ「据え置き型」などがあります。
今の浴槽が長くて足が向かい側の壁につかないのであれば、シャワーいすやシャワーステップを横向きに入れ奥行を調整します。浴槽が深かったり体が浮き上がってしまう場合は、浴槽のなかにシャワーステップを入れて座ります。
浴槽につかまるところがなければバスボードや浴槽のヘリに取り付ける手すりを取りつけます。
片マヒのある人が浴槽に入るときは、シャワーいすは浴槽と同じ高さにします。浴槽の縁が壁についていてつかみにくい場合は、手すりを取りつけましょう。
【入浴前の準備について】
入浴するまえの準備としては
・本人の体調の確認
・トイレをすませておく
・食事の前後1時間は入浴しない
・ヒートショック対策として浴室を暖めておく(脱衣所と同じ温度にする)
ようにします。
入浴後は、汗をかいているのでコップ1杯程度の水分補給をします。入浴によって体力も消耗しているので、脱衣所で一休みしてから移動します。体の水気をしっかり拭き、乾燥していれば保湿クリームを塗るのを忘れずに。
【夫婦や家族なら一緒に入ってしまう】
家族で入浴を介助する場合、まず本人を入浴させ着替えなどを終わらせるのに一時間ほどかかります。それから介助者がようやく入浴すると時間もとられます。
夫婦や家族であれば、一緒に入ってしまいましょう。時間の節約にもなるうえ、会話やスキンシップの時間もとれるメリットにつながります。この入浴方法は、自分だけ裸になるのが恥ずかしい、お風呂の入り方がわからなくなった認知症のお年寄りにも有効な手段です。
【入浴を介助する人のための道具】
介助者が濡れないための入浴介助用エプロンや水をはじき空気を通す入浴介助用ウェアがあります。また濡れて滑ることで転倒や落下事故を防止するため、水に濡れても滑りにくい素材でできた入浴介助グローブもあると便利ですよ。
【事故が起きたときは】
もしも高齢者が一人で入浴して浴槽の中でぐったりしていた場合、風呂のフタにあごを乗せてお湯を抜きます。他の家族には救急車を呼んでもらいましょう。